マイクロ流路は相分離や層流を用いた溶媒抽出などの様々な化学操作により、高効率な化学反応を実現することができる。本研究では、マイクロ流路の溶液混合の元素選択的な分析を目指して、軟X線XAS測定の適用を目指した[1]。図1にマイクロ流路の顕微XAS測定システムを示す。PDMS樹脂上に幅と深さが50 μmのT字型のマイクロ流路を作製して、100 nm厚のSi3N4膜を覆うことで、マイクロ流路セルを構成した。マイクロ流路セルは大気圧ヘリウム環境下にあり、超高真空のビームラインとは窓サイズ30 × 30 μm2のSiC膜で分離している。XAS測定は、軟X線照射後に生成する軟X線蛍光をシリコンドリフト検出器で収量することで行った。

図2に550 eVの軟X線照射後に発生するO Kα領域の軟X線蛍光イメージを示す。水とピリジンが中心部分で合流して、混合流路部にピリジンと水の層流を確認した。層流を空間分解能30 × 30 μm2のN K吸収端XAS測定したところ、ピリジンのピークが層流の液液界面で特徴的なエネルギーシフトを示すことを見出した。このエネルギーシフトから、層流におけるピリジンと水のモル比率の空間分布を得たところ、層流のピリジン部分に水が混ざっていることが分かった。本研究で開発した顕微XAS測定により、マイクロ流路上の様々な化学・生化学反応の機構が解明されることが期待される。
