液体ベンゼンの構造変化の温度依存性

ベンゼンはπ−π相互作用をもつ最も単純な芳香族分子である。本研究では、ベンゼンが液相において秩序だった構造を示すのかどうかという基礎的な問いに答えるために、異なる温度の液体ベンゼンのC K吸収端XAS測定を行った。液体ベンゼンのπ*ピークは、温度が上がるほど、固体状態に近づき、気相のピーク位置から離れていく、通常とは逆の挙動を示すことを見出した。内殻励起計算を行ったところ、温度が上がるほど、ベンゼン間同士が平行で少しずれている構造から、ずれがなくなる構造に変化することが、この特徴的な温度変化の原因であることが分かった。液相の秩序だった構造の解析は、様々な化学・生化学現象のメカニズム解明に有効であると考えられる。

  1. M. Nagasaka et al., J. Phys. Chem. Lett. 9, 5827 (2018).