電気化学反応のメカニズムを理解するには、異なる電極電位における電解質溶液や電気二重層の電子状態変化を調べることが重要である。図1に示すように、オペランドXAS測定を実現するために、作用極、対極、参照極を備えた電気化学セルを開発した[1, 2]。作用極(WE)は、金蒸着Si3N4膜であり、Au (20 nm) / Cr (5 nm) / Si3N4 (100 nm)で構成される。対極(CE)は、白金線である。参照極は、飽和KCl水溶液または3 M NaCl水溶液中のAg/AgCl電極である。オペランドXAS測定は、作用極を構成するSi3N4膜を透過した軟X線強度を測定することで行う。
電解質溶液の電子状態を調べる時には、厚い液体層のXAS測定を行う。液体層を薄くすると、電気二重層を含む電極固液界面の電子状態を調べることができる。100 mV/sの電位掃引中の硫酸鉄水溶液の電気化学反応のFe L吸収端XAS測定を行った。電気化学反応における鉄イオンの価数変動を得て、同じ電位掃引速度のサイクリックボルタンメトリー測定の結果と比較することで、その酸化還元反応のメカニズムを議論した。本研究で開発したオペランドXAS測定により、将来の電極材料や電池のメカニズム解明への道が拓かれた。
